【専門家にきく!】ホーチミン市の不動産投資

N-Asset Vietnam Co., Ltd. 代表取締役 西村武将 氏|1982年熊本県出身。熊本高校、成蹊大学卒。(株)ノエル、(株)エヌアセット勤務ののち、2011年9月 N-Asset Vietnam設立のため、単身でベトナムに渡り現在に至る。

ホーチミン市は日本人にとって最も仕事がしやすい外国の街のひとつに数えられるほどになりました。しかし、依然として不動産取引を取り巻く手続きにはトラブルも少なくありません。信頼度と安心度の高い情報提供及び日本品質のサービスを心がけているN-ASSET VIETNAMの西村武将代表取締役にお話を伺いました。

取材:2019年10月

編集部
こちらの拠点ではどんな事業を行なっておられますか?
西村さん
N-ASSET VIETNAMは2011年9月、独資で設立された不動産仲介会社です。当初は法人向けに住居・オフィス・店舗・工業団地などの賃貸不動産の斡旋を中心に営業活動を行い、2015年から売買不動産の斡旋及び管理、プロジェクトの仲介、サービスオフィスの運営などを行っています。お陰様で、新規クライアントは口コミや既存クライアントからの紹介が最も多く、クライアントから一定の評価は頂いているのでないかと思っています。
編集部
ホーチミン市の不動産市場の近年のトレンドはどのような状況でしょうか?
西村さん
ホーチミン市の不動産物件の売買価格は、直近では5年で平均50%値上がりをしたという外資系不動産会社からのレポートがあり、非常に活況を見せています。ベトナムのGDPは2014年以降、6%を超える伸びを見せていますが、不動産市場は年率で7〜8%の成長となっています。
編集部
そんなにも伸びているんですね!
西村さん
はい、2015年7月に外国人の不動産購入が緩和された影響が大きいと思います。2014年にはそれを見越して、既に不動産市場は上向きに動いていたかと思います。投資目的による「外国人枠」の所有権を抑えようとする不動産購入が目立ち、価格も高騰しています。2019年度は、特にホーチミン市では当局の許認可手続きの絡みから新規プロジェクトの販売が限られ、中古不動産の転売価格が騰がりました。2020年度前半もその傾向は続くと見られていますが、業界関係者と定期的に意見交換を行いながら、冷静に市場を見極めていき、正しい情報をクライアントへ伝えられるようにしなければならないと意識しています。
編集部
そうした中、物件タイプごとの値上がり状況はどうでしょうか?
西村さん
経済成長をしている国ですので、基本的にはどの物件も値上りしているのですが、Mid-end(中間層)以下については、所謂「実需」向け、ベトナム人の居住者向けに販売されていることもあり、ベトナムのGTPやインフレ率に近しい数字で伸びていると思います。ここは投資目的での購入も少なく、市場としては堅調だと思います。一方でLuxuryやHi-End(富裕層)向けについては、外国人だけでなくベトナム人も投資目的での購入が目立ち、価格が高騰しています。
編集部
例えばどこでしょうか?
西村さん
例えば、ホーチミン市ですとLandamark81があるVinhomes Central Parkが最も分かりやすいかと思いますが、現在は外国人枠の所有権は当初の1.8倍近くまで伸び、2020年度で約2倍で取引されるのではないかと思います。一方で賃貸市場に多くの供給が出てきており、賃貸価格は伸びておりません。その為、販売価格は伸びる一方で賃貸価格は伸びないので、利回りの数字は下がってきています。
編集部
具体的に購入価格でいうとどのくらいの値ごろ感になりますか?
西村さん
ホーチミン市の1区、2区(Thu Tiemエリア)が立地としては最も評価されており、そこで1平方メートル当たり5,500〜10,000ドルといったイメージです。タイのバンコク並みの水準の物件もあり、そこまでいくと先行して評価され過ぎではないかという懸念もありますが、それでも外国人枠はすぐに申込が入ってしまうという状況です。一方、中間層向けは、5年前なら1平方メートル当たり1,000ドル程度だったのが現在では1,500ドル程度と状況です。
編集部
西村さんがお考えになる「今後の狙い目」はどのあたりの物件でしょうか?
西村さん
予算や運用方法、想定保有期間にもよりますので一概にはお伝えできないのですが、仮に富裕層向けの物件が買えるという方で、10年近く保有を行うということであれば、今のタイミングであっても先の中心地や地下鉄1号線沿線の物件を推奨しています。そこまで予算を掛けられないということであれば、中心地から離れるしかありませんが、投資目的であれば私は中途半端な立地の中間層向けの物件よりも、地方都市の良い立地で希少性の高い物件を推奨しています。そういった狙いもあり、弊社では2020年2月にビンズオン省へ、2021年にはハイフィン市へ支店設立を予定しています。
編集部
ホーチミン市の不動産市場は過熱気味、という声もあります。実際にそういった場面がみられるケースはあるのでしょうか?
西村さん
立地や規模、付帯施設の良さから、注目を浴びる開発物件というのが時々出てきます。こうした物件は買い手が殺到するため、一般的に抽選会が実施されます。プロジェクトによっては予約金受付を開始して、1週間で予約金受付が終了するというものもあります。当選確率でいうと6分の1~8分の1というイメージでしょうか。こういった状況をみると過熱感はあるなと思います。弊社クライアントの当選確率は良い方だと思います(笑)
編集部
同じ開発物件でも、外国人向け枠と現地ベトナム人枠とで価格が違うということはありますか?
西村さん
ケースバイケースになります。ホーチミン市内のプロジェクトだと、抽選会のタイミングで外国人が所有権での購入の場合5%増しというようなケースもありましたし、勿論価格差をつけてないケースもあります。一方でそれが中古価格になると明確に分かれてきます。基本的には外国人枠の所有権は高く取引され、ベトナム人同士の中古価格とは価格が明確に分かれてきます。
編集部
中古物件の売買では、戸数上限のある外国人の所有物件が高く取引される傾向があるのですね。
※中古といってもプレビルドでの販売の場合、まだ物件が完成していないうちに所有者が別の人に購入権利を販売するケースも含む

西村さん
先のVinhomes Centralの例でいうと約2倍になったというのはあくまでも外国人枠の話で、ベトナム人同士の中古売買はもっと低い価格帯で取引をされています。また、外国人枠の所有権であっても、中間層向けの物件、所謂実需向けの物件についてはあまり高く評価されず、ベトナム人同士の価格に近しい傾向にあったり、結局買い手として外国人が現れず、ベトナム人へ売却するしかないというケースもあります。
編集部
近年の取引を見ていますと、完成後の物件の売買よりも、プレビルド(竣工前)の物件の売買の方が多いように感じます。モノができてない状況での契約で注意すべきことはありますか?
西村さん
プレビルドでの取引の注意事項は諸所ありますが、特に注意して欲しいのは、「景観予想」、「実有効面積」、「竣工予定日」、「室内設備」、「購入名義」という5点です。現物を確認して購入できるわけではないので、最低でもこの5点についてはきちんと理解した上で購入フローに進んで欲しいと思います。順に解説していきます。
編集部
よろしくお願いします。
西村さん
まず「景観予想」についてですが、これは私の実務経験にもよるのですが、リバービューまたは景観が抜けているものが価格が伸び転売を行い易いと実感しています。モデルルームによっては購入フロアや間取りの景観予想をバーチャルで見せてくれるところもあります。少なくとも自身が購入しようとしている部屋の正面が空地などであれば、建築予定はないかなどヒアリングし、将来的に景観が悪くなる可能性はないかなど、確認を行った方が良いかと思います。
西村さん
次に「実有効面積」と「竣工予定日」についてです。プレビルドだからこそ消費者保護の観点からこの2点については法律でデベロッパーにペナルティーが設定されています。ただ、法律の規則と同じかそれともより重いペナルティーを設定しているかはケースバイケースで売買契約書に必ず記載されています。売買契約書に記載されている㎡数と、実際に引渡しを行った際の㎡数について何%ズレていたら金銭取引を行うか、予定竣工日から何日遅れてたら違約金がデベロッパーに発生するか、こちらはご自身の資産を守る為にも、担当者からの言質だけではなく、ご自身でも売買契約書にどのように記載されているかきちんと確認を行いましょう。
編集部
ここまではプレビルドだからこその注意点ですね。
西村さん
「室内設備」については、引渡しから居住/賃貸に関わらず、家具・家電を設置しなければなりません。その為、当初の予算とズレることがないよう、売買契約書内に設備リストが必ずありますので、1つずつ細かく確認を行いましょう。モデルルームは内装を実施しているので、引渡しの状態とは異なります。そのため、担当者と設備リストを確認しながら予算に漏れがないか確認を行います。
西村さん
最後に「購入名義」についてですが、不動産は夫婦の共有財産と法律上規定されていることから、購入時はパスポートのみで購入可能なのですが、売却時は独身か既婚か、来越可能か不可能かで用意する書類などが異なってきます。この点は非常に手間の掛かる点で、正しい情報を伝えられる方も少ないと思います。特に夫婦でない方(例えば親子など)での複数名義で購入を行うと、売却時は更に手間が掛かります。購入はなるべくシンプルに単独名義での購入を私は推奨しています。
編集部
名義については外国人として購入することを意識して、正しい情報をしっかりと把握してから進めたいところです。
西村さん
また、ホーチミン市では、当局が不動産取引に必要な「ピンクブック」の交付が遅れているという現状があります。ピンクブックがない状態で転売を行うことも勿論可能なのですが、デベロッパー毎に売却までのプロセスが異なりますので、この点もご注意ください。
編集部
次に、御社としての今後の事業展開についてお聞かせください。
西村さん
ホーチミン市にはいろいろな業界の方々が続々と渡ってきています。直近だとUNIQLO1号店のオープンや無印のオープン予定などは、在住者にとっては嬉しいニュースで今後益々住生活利便性は良くなってくるかと思います。不動産業界にも日系、あるいは多国籍の大手企業が続々と参入しており、競争はさらに激化しています。

不動産仲介や管理業での大手というと、外資だとSavillsやCBRE、JLLなどになり、これから我々が規模で追いつくことはなかなか難しいのですが、個々の不動産知識や実務経験、サービスの質などで他社には負けない魅力的なスタッフを増やし、弊社のファンを増やしていきながら、ベトナム主要都市で不動産サービスが行えるよう支店展開を計っていきたいと思っています。

編集部
最後に、ホーチミン市の不動産業界にどんな貢献をしていきたいでしょうか?
西村さん
ホーチミン市に限らず、ベトナム全体としてでですが、不動産市場は透明性が高い業界とはまだまだ言えず、仲介実務であっても苦労することが多々あります。そのような中でも信頼度と正確性の高い不動産サービス提供や情報発信を行い、健全な不動産取引が継続的に行え、市場全体に継続的に海外から資金が入り発展していけるよう、微力ながら貢献していきたいと思っています。特に不動産売買市場の分野は、日本人だけでなくその他外国人も正しい情報が入らず、所有した後に運用に困っている方も多々見受けられます。足元でいうとそのような方々への適切なサービス提供からになるかと思っています。
編集部
不動産産業の発展やルールの整備は国の発展と直結すると思います。ベトナム、そしてホーチミン市のこれからの発展が楽しみですね!本日はありがとうございました。
西村さん
ありがとうございました。

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